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芭蕉紙と琉球和紙の紹介

琉球紙の歩みと特色

琉球紙がはじめて沖縄史に登場するのは、1694年のことです。大見武馮武という人が、首里王府の命を受け薩摩(鹿児島県)で杉原紙と百田紙(沖縄では「ももたがみ」と呼ばれた)の紙漉き技法を学んで帰国し、城下の首里金城村で紙を漉いたといわれています。その後、1717年に至り4人の下級士族によって、琉球紙独特の芭蕉紙が共同開発されています。沖縄の紙漉きは王都首里を中心に発達してきました。金城村で百田紙と杉原紙、儀保村宝口で百田紙、山川村で芭蕉紙が漉かれ、その技術は久米島、宮古島、多良間島、石垣島、西表島にも伝授されています。琉球紙の歴史はそれほど古くありませんが、芭蕉紙といい独特の紙を創造するなど、豊富にある原料を使い沖縄の風土に適した紙を造ってきたといえます。

一枚一枚丁寧に漉かれた
蕉紙菴の紙

芭蕉紙

芭蕉紙は沖縄の代表的な織物である芭蕉布と同じ材料である糸芭蕉を原料としていますが、この二つが原料を競合することはありませんでした。芭蕉紙は芭蕉布の繊維にならない部分を原料としたからです。この芭蕉紙も首里王府時代には重要な役割をになってきたのですが、明治時代に途絶えてしまいました。途絶えていた琉球紙再興に尽力したのが重要無形技能保持者の安部榮四郎氏であり、芭蕉紙を復興したのが弟子の勝公彦氏です。芭蕉紙の特徴としては、繊維が強靭で荒く、非繊維素が多量に含まれ、それが芭蕉紙特有の素朴で渋い地合いの紙にしあげていることです。芭蕉紙は沖縄でうまれ、沖縄でのみ生きてきた独特の紙であるといえます。(資料:蕉紙菴)

手漉き琉球紙工房-「蕉紙菴」


蕉紙菴にある
安部榮四朗氏の書

琉球紙は現在では首里儀保町の「蕉紙菴」において安慶名清氏が故勝公彦氏の技を受け継ぎ、芭蕉紙・琉球紙の魅力を伝え続けています。安慶名氏の漉く紙はその人柄を表すかのようにしなやかで温かみがあり沖縄ならではの味わいを醸し出しています。和紙を手にした瞬間、誰もが熟練された技の見事さに驚くことでしょう。自然を相手に一枚一枚丁寧に仕上げた和紙はまさに人と風土が造り上げた芸術品といえます。

美しい和紙の用途は書道をはじめ絵画、建築、表具、茶道、折り紙、玩具等多種多彩です。日本の豊な伝統文化を今に受け継ぎ次世代に残すためにも、地産和紙の普及がもっともっと計られていかなければならないと思います。安慶名氏は現在、時間と手間のかかる作品造りの中、石垣島の博物館や県立芸術大学等においても手漉き和紙の講座や指導を行い後継者の育成に努めています。また、県内及び東京において企画展や展示会への出品を 行ったり、「紙」を通してのネットワーク作りに取り組み沖縄の伝統工芸の発展に尽力していらっしゃいます。

芭蕉紙に紅型を染色
妻・裕子さんの作品

丹念な作業をこなす安慶名氏

首里の豊な水が育んだ琉球紙

琉球王国時代から手漉き和紙が栄えた首里は多くの水場があり、その豊な水は人々の生活ばかりでなく琉球紙の文化も支えました。

首里周辺には「樋川(ヒージャー)」と呼ばれる井戸が60以上もあり粘土質の土を通って流れる水はアルカリ性の水質で紙漉きに適しており、首里に紙屋が栄えた所以でもあります。まぼろしの紙と呼ばれた琉球紙を復興した先人達に思いを馳せ、首里に点在する「樋川」を巡ってみるのも楽しいかもしれません。

金城大樋川(金城町)

首里金城町の石畳を下った中程にある樋川。あいかた積という石積み技法が美しい。かつて首里王府の公用紙であった百田紙・杉田紙が漉かれたという。

【写真】 左:金城大樋川(金城町) / 右:首里城から識名園へと続いた美しい石畳の道

宝口樋川(儀保町)

天気に左右されることなく豊かな水を湛えた樋川も近年では水量が減ったという。故勝公彦氏はこの近くに工房「蕉紙菴」を構えた。現在は安慶名氏が継承している。

【写真】 左:宝口樋川(儀保町) / 右:今でも宝口を流れる水

さくの川(山川町)

グランドキャスルの駐車場から住宅地の方に入ったところにある樋川。現在公園として整備され、今でも静かな環境の中で水の流れる音が聞こえている。ここではかつて芭蕉紙が漉かれていた。

【写真】 さくの川(山川町)

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